ヌルスルタンを歩く

いよいよヌルスルタン市の中心部にやってきました。
氷点下15℃,雪の舞う極寒の街を歩き回って見ましょう!(凍死)
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そもそもヌルスルタンってどこやねん,とお思いの方もいらっしゃるでしょう。
カザフスタンの首都アスタナが,2019年3月に初代大統領ヌルスルタン・ナザルバエフにちなんで改称されたのが,ここヌルスルタンです。
この都市は旧首都アルマトイに代わって1997年に遷都された新しい都市で,日本人建築家,黒川紀章の初期デザインに基づいて現在まで開発が進められています。
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空港から中心部に出てくると,玄関口となるのがこの怪しい建物。
国営の石油会社が入居しているらしく,さすがのオイルマネーで成金感が半端ないですね。
奥に見えているのはハーン・シャティールという巨大なショッピングモールで,これまた立派なモールらしいです。
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大通りをまっすぐ進むと,ヌルスルタンを代表するタワー,バイテレクが見えてきます。
左右対称な建築物に囲まれるバイテレクはヌルスルタンを象徴する景観であり,本当に一度来たいと思っていました。夢がかないましたね。
で,エントランスで入場料を払うとエレベーターで展望台まで上がることができます。
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展望台の天井はゲルをイメージしたデザイン。
生憎の曇り空ですが,ぶっちゃけ眺望はどうでもよくて。
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バイテレクのメインはこの手形。
これは初代大統領ヌルスルタン・ナザルバエフの手形になります。建国の父であり,新首都生みの親であり,このバイテレクの構想をも練ったナザルバエフの手形こそが,ここを訪れる人々の関心の的でもあります。
カザフ人はモンゴル人と同様に肉が好きで恰幅がいいわけですが,手形もめっちゃ大きいです。身長は私のほうが大きいはずなんですが…
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故・黒川紀章の設計した計画都市を堪能しながら歩いていきます。
すべてが大陸規格なので,雪道を歩いて移動すると結構疲れますね。。
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大通りの突き当りには大統領宮殿が鎮座しています。やはり国旗の青を基調とした立派な建築です。
年末ですから警備は少なく,観光客もいませんね。
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コンサートホールもご覧のようなデザイン。
前衛的な建築物が多いのはよいですが,冬になるとあまりの極寒でそれどころではないような印象を受けます。さすがにここは緯度が高すぎるのでは…?
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エシム川を渡り,対岸の国立博物館にやってきました。
ここは世界でも指折りの展示面積を誇る博物館とのこと。
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エントランスホールだけでこの広さだもんね。。
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展示の目玉はカザフスタンから出土した「黄金人間」のレプリカ。
金はカザフ地域の過去の文明を象徴するもので,国宝のような扱い。「黄金の間」に入るには追加料金が必要になります。

新首都ヌルスルタンとナザルバエフ

金の数々と並んで展示の目玉となるのが,カザフスタン初代大統領にして昨年まで30年間この国を統治したナザルバエフに関するもの。
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エントランスホールにはナザルバエフの銅像が鎮座しています。まだこの方存命ですからね…?
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この博物館には「独立の間」なる展示フロアがあり,カザフスタン独立後に関する資料も充実しています。
それを見ると分かるのが,ナザルバエフは名実ともにカザフスタン独立の立役者であり,カザフスタンの象徴的存在であるということ。
オイルマネーを効率的に使ってGDPを上げ,中国やロシアとも良好な関係を維持しながら今のカザフスタンの地位を築き上げることは,ナザルバエフ抜きにはできなかったでしょう。
ワンマンで内政をうまくコントロールしながら経済成長,外国とも中立外交というあたりはシンガポールのリー・クアンユーにも近いところがあるかもしれません。
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新首都アスタナ建設に関する展示もあります。
そもそもアルマトイからアスタナに遷都した理由としては,アルマトイが地震が多い土地であるということと,カザフスタン北部にロシア人口が多く分離独立の懸念があったということが挙げられています。
で,ここに新首都建設の大号令をかけたのが当時のナザルバエフ大統領になります。
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例のバイテレクも,ナザルバエフによる構想であることがわかります。
まさにナザルバエフが生みの親であるというわけです。
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もちろん,黒川紀章に関する説明もありました。
国際コンペで丹下健三やノーマン・フォスターらを破り,黒川の都市計画案が採用されました。
都市計画のみならず,前回の記事で登場したヌルスルタン空港のターミナルビルなど様々な建築も彼の手によるものです。

莫大なオイルマネーを注ぎ込んで作られた新しい首都。
ヌルスルタンは人口100万人に達し,既にカザフ人が人口の大半を占めるに至っています。首都機能の集中とともに高度な人材も集まりつつあり,ソ連から分離した新生国家カザフスタンを安定した独立国にせんとするナザルバエフの目的は達成されたといえるでしょう。
ヌルスルタンの繁栄はカザフスタン独立の象徴であり,それらはすべてナザルバエフの偉業なのです。アスタナ改称の理由も,これだけナザルバエフがカザフ人に讃えられる理由も合点がいきました。

(余談ですが,昨年の即位礼正殿の儀に際してカザフスタンは大統領経験者としてナザルバエフを参列させています。日本人はチャールズ皇太子とブルネイのイケメン皇太子しか興味なかったようですが,カザフスタン側から見ればそれなりの采配だったのではないかと思ったりしました)

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博物館を出ると,相変わらず前衛的な建造物(これはコンベンションセンター)や,独特なセンスの高層アパート群が続きます。
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ここはバイテレクの観光案内所のおばさんがオススメしてくれたヌルスルタンで最も立派なモスク。
ちょうどお祈りの時間で,親切にも受付のおじいさんが裏紙に地図を書いて礼拝の順路を教えてくれました。
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カザフスタンとキルギスは比較的戒律のゆるいイスラム教国家ですが,多くの人々が礼拝に訪れていました。
それにしても新しいだけあって豪華絢爛なモスクですねえ。
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さあ,これはモスクの近くから大通りを写した写真ですが,皆さんいかがでしょう。
画像ではよく判らないと思いますが,博物館やモスクのある現在地から,ピラミッドのような見た目のカルチャーセンター,大統領宮殿,バイテレク,石油会社まですべてを一直線上に見通すことができます。
さすが計画都市…!すげえええ!
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計画都市ヌルスルタンを心ゆくまで堪能したところで,というか寒すぎて活動限界が来たところで,バスに乗って駅へ向かいました。

まとめ

・計画都市すごい
・ナザルバエフは偉大な英雄
・冬のヌルスルタンは人間の生きられる場所ではなかった

(続く)